2013年8月30日

むぎのこ大キャンプ②・脳の発達には「ノー」が必要

250人の夕食作りはお父さん・お母さんの協力で


園 長 むぎのこを卒業して学校に通っている子ども達と、お父さん、お母さん達の盛大なキャンプがありましたね。場所は恒例の中小屋小学校(※1)で、午前中は道民の森などに行って活動したそうですが、総勢がまた250人くらいだったそうで。いかがでしたか。
 ※1 北海道石狩郡当別町の廃校をお借りして、学童の活動等に活用させていただいています。

深瀬さん 初めての中小屋のキャンプだったんで、いつもと違ってテントではなく学校にと泊まるということで子ども達もどうなのかなと思ったんですけど、学年ごとに教室があって、テントだとそれぞれ孤立する感じなんですけど、お互いに子ども達を見合ったりして、すごく充実してました。初めは海水浴に行く予定で、水着も着込んでたんですけど、急きょ山登りになりました。でも、特に変更で「ぎゃー」っていうこともなく。

園 長 自閉症の子ってそうですよね。自閉タイプの子どもって変更に弱いから、丁寧に育てなきゃってよく言われてますけど、小さい頃から安定してくると、少々の変更は全然平気ですよね。

深瀬さん 登ったことがない山だったので、どこがゴールかもわからなくてきつかったですけど(笑)。靴もうちの子は、海だと思っていたので、サンダルだったんですよね。でも意外にすたすた登ってて。

園 長 最近は山で熊が出ることが多いので、むぎのこでの山登りブームはおさまってるんですけどね。

深瀬さん 私も水着を着て登って汗だくでサウナ状態だったんですけど(笑)。水着脱ぎ損ねて服の中ドロドロだったんです(笑)

園 長 海は雨が降ってて、山は晴れてたんですか。

深瀬さん ほんとに晴れてるのかなって半信半疑だったんですけど。全然晴れてて暑くって。でも夜はみんな温泉にちゃんと行けて。

園 長 ご飯は外で食べられたんですか?

深瀬さん 高学年以上は、雨だったんですけど外にテントを張って食べました。

園 長 250人の食料って大変じゃないですか。

深瀬さん そうですねー

園 長 誰が作ったんですか。

深瀬さん キャンプ委員会の食事担当のお母さん達です。朝からびっちりで。焼いたのはお父さんです。3時ぐらいから私たちが登山してる間に一生懸命やってくれて。

園 長 お父さんは山には行かないで、焼き物をしてくれて、その間お母さん達が子ども達と活動してたんですね。

古 家 山に登ったお父さんも何人かいましたね。

園 長 雨が降って、急な変更もあって、それでも一生懸命やって充実してて、お父さん達お母さん達がご飯を用意して待ってるなんて、すごい協力関係ですね。昔のむぎのこキャンプといえば結構トラブルもあって、ちょっと嫌な思い出も無きにしも非ずの感じだったんですが(笑)。今のお母さん達すごいですね。

古 家 やっぱりね、文化が作られていったのかなって。みんなで協力してやるっていう文化がこの10年でできてきたのかなあって。

園 長 不満とか文句とか言う人少なくなりましたね。みんな楽しむ感じ。

深瀬さん ほんとは私も面倒くさがりなんで、「いやーめんどくさいな」と思って行くんだけど、でも行くと楽しいですね。

園 長 お風呂も何カ所かに分かれたんですよね。

深瀬さん はい、中小屋温泉と、月形温泉と、新篠津温泉です。親同士も連携とって、「私はこっち見るから、こっちはお願いね」っていう感じで。

園 長 やっぱりみんな子育ての知恵があるから、この子は一人でいられないとか、服が脱げないから、じゃあどうするみたいな。心の連携ですね。紙に書くんじゃなくて体でできちゃう。

古 家 そしてね、ちょっと難しめのハンサムなお父さんが、クラスにはそのお父さん一人しかいないとわかって私真っ青になったんだけど(笑)。でも他の職員やお父さんが手伝ってくれて、とっても楽しく温泉に入れたという報告も受けました。


上級生が下級生を支える場面も


園 長 実は昨日当別町の町長さんにお会いしたんですが、すごく喜んでました。温泉をそれだけ利用してくれたなんてって。麦の子会がいろんな意味で当別町に貢献してくれてるし、子どもがこんなにたくさん当別町に来てくれるっていうことが嬉しいと仰ってました。
 寝る時はどうでしたか。250人が寝るっていうのは大変なことだと思うんですけど。

深瀬さん そう思ったんですけど、私たちの学年の子は登山で疲れ切っていたのか、もう9時過ぎには静かになって。沢山いると「ぎゃー」てなることもあるかなと思ったんですけど、そんなこともなくびっくりしました。

園 長 障がいがある子とか、重たい子の場合は睡眠障害がつきもので、なかなか夜寝ないっていうお子さんがいるのがあたりまえですよね。中小屋パワーかしら。

古 家 中小屋って校舎が木でできているから、普通の学校の雰囲気じゃなくて癒される感じ。

園 長 雨が降ったから、高学年以上の子達もみんな中で寝たんですよね。

古 家 高校生達が「俺たち、どこで寝るんだ?」って聞いてきたから、「ごめんごめん、体育館にして」って言ったら、こころよく寝てくれて。

園 長 中小屋に小学校を作ってくれて有りがとうっていう気持ちですね。地域の子どものために作ったと思うんですけど、今は違う活用で生き生きと子ども達のために使わせてもらって、小学校も喜んでくれていると思います。

古 家 縦の関係、上級生が下級生の面倒を見るということもだんだん出来てきて。

園 長 この前のキャンプは普通学級通っている子ども達中心のキャンプだったんですけど、今回は割と障がいの重たい子のキャンプなんだけども、やはりそういうつながりってあったんですか。

深瀬さん みんな助け合ってって感じで、大変な子がいたらみんな走って行って、お互いに見合ってて、自然にできてた感じがします。

園 長 お互い非難せずに! なんて素敵なんでしょう(笑)

古 家 年長さんも何人か参加したんですけど、お父さん達も感想でまた来年も来たいですって。

園 長 誰かを非難するのは簡単だけど、協力しあうのはほんとはすごく難しいことだと思うんですけど。

古 家 必ずトラブルってあるし、間違いってあるから。

園 長 でもそれを乗り越えて協力しあおうって。お母さん達素晴らしいですね。

古 家 そうですねー

園 長 そして、子ども達が寝た後、お母さんお父さん達のコミュニケーションタイムですよね。

深瀬さん うちのお父さんはお仕事だったので、その夜のためだけに来たって感じでしたけど(笑)

古 家 でも、他のお父さん達を和ませてくれて。

園 長 過去に悪さをした事も、他のお父さん達に話してくれたそうですね。

古 家 そうそう、そういうことを堂々と言っていいんだと。そういう感じで他のお父さんとも仲良くなれて。昔ってスネに傷を持っている人が必ずいるって言ってたけど、生きていくってそれぐらい馬力がないと・・・

園 長 いま社会で立派に貢献して生きているお父さんたちが、中学生、高校生の時はかなり暴れん坊だったという話をできたんですね。それは逆に勇気もらえますよね。その時「悪い」っていうんだけじゃなくて、長い人生の中そういうエネルギッシュなこともあるけど、ちゃんと一生懸命、家族と子どもと社会のことを考えて働いているお父さんがいるっていうことですよね。


里親ファミリーホーム全国大会でのお話


園 長 先日名古屋に出張に行ってきまして、そこでは里親ファミリーホームの全国大会がありました。前から知ってはいたんですが、そこで出会った慶応大学の小児科のお医者さんで、渡辺久子先生っていう方のお話がありました。

もう古家ばばばあちゃんそっくりなことを言っていて、すっごくおかしかったんです。子どもっていうのはお母さんの思うとおりにはなかなか育たないっていう話をさんざんしてました。人間の赤ちゃんはある意味大変なエゴイスト。実際お母さん達が育児をやってみたら大変。女の人は特にですけど、身にしみてわかってると。育児は大変だと心の中で思ってるだけではなくて、いろんな人に助けてもらわないとだめだ。

ダニエル・スターンさんという人の言ってたことで「子育てするのはオーケストラだ。その子のためにいろんな人が音を奏でて、それでその子が成長する。個人プレイでは子どもは成長しない。」って。

あと、絶対赤ちゃんはむずがると。むずがる時になにが起こってるかというと、脳神経系がぐーんと発達するらしいですね。むずがったら「だめだ」って言われることが多いでしょ。それでお母さんはカーッとなったり、自己嫌悪したり、失敗して自分がだめなのかなーって思うんだけども、実は赤ちゃんというのはむずがることで発達をとげるんですね。

お母さんが悪い子どもが悪いっていうことではなくて、脳が健康に発達するプロセスの中に、このむずがる時期がきちんと組み込まれているそうなんです。だから、どうしてもカーッとなったり、その子を攻めたりしちゃうんですけど、そうではないっていうことをお母さん達に知ってほしいなあって言ってました。

そしてそういうことを通してお母さんの脳も発達するっていうことで、私もそこでピーンときたんだけど、子育てって、ただ子どもを育てるだけじゃなくて、お母さんも発達するんだなあっていうこと。これはばばばあちゃんもよく言ってることですけど。

古 家 私が言ってるんじゃなくて、私の母親とかばあちゃんとかから伝承されて覚えたことなんですけどね。でも私の次の世代になると理屈で頭の良い子に育てようっていうふうになってしまって、あまり伝承ということがなくっているというのが現代の子育てかなって思います。


思春期は心の鉢替えの時期


園 長 思春期の話もしてました。赤ちゃんって力がついてお腹の中で胎動して生まれるときは思いっきり自分で出てこないといけないでしょ。その力があってこの世に誕生するから、第二の誕生の思春期も思いっきりまたキレる。親に反抗して、それがあって親を超える自分になるっていう話でした。

いままでの植木鉢を根っこで破るほどの力を子どもは思春期に持つから、そして根っこを張らないと生きていけないから、親の植木鉢を大きくしなきゃいけないと。でもそれには嫌なこといっぱい言われて。でも嫌なこと言われるその時期にまた脳が発達してる、というふうに脳科学で説明してくれてました。

昨日むぎのこブログにも載せたんですけど、中学生の女子会をしたんです。ひと組の子どもとお母さんがすごいバトルしてて、子どもはお母さんに文句があるっていうことで。お母さんはつらいって言ってきたのでみんなで話し合おうって。

それで、その子の言うことすごく素晴らしくて。お母さんがお父さんの文句を私に言うと。そしたら、私の血の半分はお父さんなんだから、私も「だめだ」って言われてる気がして「それが嫌なんだわ!」って。それでお母さんが私に「だってあんなだんなのこと、子どもは知らないからあんなふうに言ってるけど」って。

私がそこで「まあまあまあ。お母さんの気持ちは分かるけど、子どもはね、そう言われたら嫌なんだっていうこともわかんないとけないんだわ」って。夫の悪口とか嫌なことを子どもに愚痴らないで、やっぱり仲間お母さん同士で愚痴っていかないと、自分のストレスの垂れ流しを子どもにしたら子どもはつらいんだなあって。

娘って母の愚痴を聞きがちなんだけど、それって後から子どもが大きくなったときに、なかなか生きるのがつらくなったりするんだよね。それを私たちが言わせたんじゃなくて、子どもから言ったんですよ。「私が否定されてるみたいで、生きるの嫌になるんだわ」って。すごかったですよ。

古 家 ほんとに思春期にそんなこと言えるなんて、いいなあって思いましたね。

園 長 きちんとした積み重ねで大人になるんじゃなくて、ちっちゃい時はむずがったり、思春期もキレたり、そして親も一緒に育てられるっていう子育ての方向性を、慶応大学の渡辺先生も言ってくれてました。そういうことが少しずつできたら、子どももお母さんも楽になるなあってあらためて思いました。


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